【第10回記念平泉展によせて 】 哲学者 梅原 猛
人類の21世紀を望見したとき、自然環境の破壊、人間のひ弱な“心”の在り方を思うと、
平泉会の皆さんならずとも時代の危機を感じないわけにはいかない。
これまで忘れてきた、「縄文文化の知恵と心」を思い起こす時代ではないか。
狩猟採集文化の中には、人間が生きて行くための健全な知恵がある。
それが、人間の生活を飛躍的に発展させた農耕牧畜文化の中で見捨てられ、工業文明の発達とともに完全に無視され忘却されたのではないか。
縄文文化は、自然と人間、動物、植物が一体化した「循環の体系を守る世界観」である。人類は、現在までとってきた人間中心、自我中心の世界観を反省し、この狩猟採集時代の世界観に立ち戻り、個人ではなく、種を中心にした考え方、永遠の生と死の循環の思想を振り返ってみたいと思う。
自然と人間との係わりを常に考え、豊かな、「心の健康」を推進されている平泉会の皆さんのご活躍を願っております。
「平泉」10号(1999年)より
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